第8回熱処理について

第8回
熱処理について

2023年04月28日

今回は熱処理について説明いたします。

熱処理とは、炭素を含む金属(主に鉄鋼材)の加熱・冷却することで生じる組織変化を活用し、素材の性質や耐摩耗性を向上させる処理方法です。 代表的な熱処理方法として、「焼入れ」「焼戻し」「焼なまし」「焼ならし」があり、鉄鋼材を硬くしたり軟らかくしたりすることができます。

熱処理炉

1.焼入れとは

金属を所定の高温状態から急冷させる熱処理です。 鉄鋼材を硬くして、耐摩耗性や引張強さ、疲労強度などの強度を向上させることができます。

2.焼戻し

焼入れあるいは溶体化処理されて不安定な組織を持つ金属を適切な温度に加熱・温度保持することです。 組織の変態または析出を進行させて安定な組織に近づけ、所要の性質及び状態を与えることができます。 焼入れによって加工品に熱膨張等による内部に応力が発生することがあります。

この応力は焼入れ後にも残り、変形・割れの発生や、機械的性質の悪化を生じさせることがあります。 このような応力を残留応力と呼びます。この残留応力を焼戻しによって除去、あるいは軽減させることができます。

3.焼きなまし

材料の加工硬化による内部のひずみを取り除き、組織を軟化させ、展延性を向上させることができます。 鍛造、鋳造、冷間加工、溶接、機械加工等で生ずる残留応力を除去するために行われるもので、ひずみ取り焼なましとも呼ばれます。

4.焼きならし

金属を所定の高温まで加熱した後、空冷で冷却し金属組織の結晶を均一微細化させて機械的性質の改善や切削性の向上を行う処理です。 過熱異常組織や炭化物の部分的凝集、結晶粒の粗大化や不均一を組織全体で成分を均一化させ結晶粒を微細化させることができます。

工法・材質別の機械的性質表

ダイカストの機械的性質

種類の記号 質別 引張試験 参考
引張強さ
(N/mm²)
伸び
(%)
ブリネル硬さ
(HBS,10/500)
ADC3 F JIS規格記載なしの為、
砂型試験片のAC4B-F材と同等とお考え下さい。
ADC6 F
ADC12 F

〈参考:JIS規格〉

金型試験片の機械的性質

種類の記号 質別 引張試験 参考
引張強さ
(N/mm²)
伸び
(%)
ブリネル硬さ
(HBS,10/500)
AC2B F 150以上 1以上 約70
T6 240以上 1以上 約90
AC4A F 170以上 3以上 約60
T6 240以上 2以上 約90
AC4B F 170以上 約80
T6 240以上 約100
AC4C F 150以上 3以上 約55
T5 170以上 3以上 約65
T6 230以上 2以上 約85
AC4CH F 160以上 3以上 約55
T5 180以上 3以上 約65
T6 250以上 5以上 約80

〈参考:JIS規格〉

砂型試験片の機械的性質

種類の記号 質別 引張試験 参考
引張強さ
(N/mm²)
伸び
(%)
ブリネル硬さ
(HBS,10/500)
AC2B F 130以上 約60
T6 190以上 約80
AC4A F 130以上 約45
T6 220以上 約80
AC4B F 140以上 約80
T6 210以上 約100
AC4C F 140以上 2以上 約55
T5 150以上 約60
T6 210以上 1以上 約75
AC4CH F 140以上 2以上 約50
T5 150以上 2以上 約60
T6 230以上 2以上 約75

〈参考:JIS規格〉

弊社が使用している熱処理についての詳細はダウンロード資料「熱処理と機械的性質」よりご確認ください。

今後も鋳造に関する情報を発信いたしますのでお気軽にお問い合わせ下さい。

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